万座毛

東尋坊のようだと仰るお客様もいらっしゃいます……私は行ったことないですよ、とガイドが言ういかにも観光バスが寄りそうな万座毛。
沖縄バスは定期観光バスコースを三つもっていて、沖縄に通い始めのころさっそく南部戦跡コースに参加したものだ。
ひめゆりの塔である。
さて北部に足をのばすまる一日コースであるが、まずはこの岬のささやかな観光門前町のごとき正面にありがちなオブジェ。
 
長八だって初めはこんな扱いだったろうに、ひどく大味だ。
それは二組と一つあって、それぞれにプレートが張り付いているのだが、各々1964年と1984年と刻まれていてさて残る一つは穿ちはしたが目はいれられなかったまなこのような陰影を、凹部に宿しているのだった。
こね国のせんきゅうひゃく年代の後半の末尾「4」の数字にどんな意味があるが、知らなくったって不思議はない。これでも戦争を知らない子供たちの一人なんだから。
 
三つめの窪みに嵌め込まれていたのは、それらよりまえの年が彫り込まれていただろう。
刻まれた過去をプレートを剥がすくらいで、消すことはできない。