蝦蟇口乃綱細工

がま口の肩紐をロープの切れ端で、しつらえてみた。トゥルーラバーズ・ノットを施して、革製のかま口にロゴタイプの繍(ぬいとり)を貼った。

刺繍は春日井(愛知県)の業者、東野町の屋号も「刺繍屋」。通り沿いのマンションの一階、夫婦と娘の家内工業。刺繍ミシンは吹上の手芸展示会の手芸デモを見て以来名古屋堀田のブラザーしかしらなかったが、こうした業者のところで稼働しているのは初耳の専門メーカーのものだった。

お嬢さんは石垣帰りで、トゥルーラバーズ・ノットがこの島から始まることに好感を持って作っていただいた。

がま口に取りつけてくださったのは、メルファンと名乗った島の手芸屋さん。本島国際通りのミシン一台の手芸屋さんの数もすごかったが、石垣にも相応の人がいる。

足つぼのキミちゃんが客ごとに取り替えるソファー・カバーが欲しいというので、チャッチャッと採寸して発注してやった。そのついでに彼女の、教えてくれた行きつけのミシン屋さん。

専用アームもなしで、きれいに縫えた。微妙に傾いたりするものだが、気を遣ってよくできてる。これから、ここにちょっとした縫製は頼む。

肝心のがま口は、ごついロープが取り付いてまことに妙。予想したことだが、こんなものをぶらさげられるキミちゃんのお土産店コーナーはどうよ。
目でなく触覚で彼女がする品定めとは?
私も目を閉じて、彼女の気持ちになってみようとかま口に触ってみる。
ぜんぜん駄目。

ロープには麻紐を多用、そのざらついたテクスチャがやわい観光客にNOを突きつける。

1ミリ2ミリ3ミリ、4ミリ6ミリ7ミリ、9ミリ10ミリと12ミリまで。パールホワイトっぽい合繊、生なり。グレー、黄、スオウ、浅黄、サトウキビ黄と緑。小笠原父島の法子ちゃんオレンジに、石垣の高階さんの藍……こんなとこが天然のロープの太さと色の種類。
揃ってるのは三分の一くらいで、満足のいくがま口の肩紐になってはいないが、はじめの試作一〇はこんなもの。

布製ではあるが980円のがま口もならぶお土産街の路地裏にマルが四つならぶモノを、キミちゃんはいつまで黙って置いてくれるか。

名古屋港でのクリマで見かけた神戸の業者、がま口の革ばかりか留め金も中国製じゃないと言ってた。確かめに来るとは思ってないだろう。

がま口の展開、さしたる思いつきではない。先も見えない。