水平線に眠る

石垣の脇を往けば遥か二〇〇〇キロも先で果てる辺り、その半島の表浜で手編みのハンモックにしつらえる流木を拾う日を過ごして四〇年も経った。その半島がこの島と姉妹関係にあるのは、椰子の実ゆえのことだと記した碑がその頃からあった。いつかその島に住む日が来るとは、思いもよらなかった。

あれからざっと、三〇〇本もハンモックを編んだろう。さらに五〇〇本分のロープとともにこの春、住民票を島に移した。この数を日本の人口で割り算してみると、二〇万人にひとつということになる。

突飛なもの言いをするようだが、これでも目立たぬ仕事でありたいと……思っているつもりだ(このことについつは後に詳しく)。

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私の仕事場は人通りもあって、編み上げたハンモックの結び目をほどよく締める下心で、覗く人を載せたりしている。寝返りが打てないと時々、感想を言ってくださる人がいる。購入には及ばないと控え目に、表明なさっているのかもしれない。

しかしこの感想には、重要な指摘が含まれている。四季ある国でハンモックは夏休みのキャンプ場でせいぜい一五分、ブランコ遊びしてみる程度のものだが、亜熱帯では違う。

寝返りが打てないと言って間違いでないが、体重はネットで分散して支えられて、正確には寝返りを打つ必要がないのだ。さてそこで寝返りが打てないといえば、寝たきりの要介護者と、まだ寝返を覚える前の生後五ヶ月たらずの赤ちゃんだ。

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こうした方々にハンモックは、普通の寝具としてもっと再評価されてよい。石垣島に手編ハンモックの常設空間「ギャラリー・パナリ」を開いたのは、こういうわけだ。

〈続く〉