はちわれのロック

可愛らしい尋ねコ欄を目にして、かつて縁側で聞いたラジオの「尋ね人」の時間を思い出した。
眼下には蟻地獄の愛らしい擂り鉢があった、板張りの縁側の隙間から十銭玉が落ちていたが、昭和三〇年になるかならい頃の子どもにも値打ちのないもので、蟻を底から救ってやる兵器に使った。

コクリュウコウショウとかルイリーとか、毎日耳にする呪文のような地名と、行方の知れない人々のしかし固有の身体的特徴を聞いてはイメージして忘れた。
あざ、キズ、つむじが二つあるだの尻にほくろがあるだの。三歳か四歳頃の、草屋根に瓦の庇を掛けた軒下のことだ。

不明の猫の行く末を案じた優しい飼い主のもとに、ロックは帰宅したであろうか。