かわいい奴
遺構二棟その境はガレの棄て場になっていて、まずはここから手をつける。ガレと言っても島では、コンクリート片のことでない。
大きなものは敷地外辺に、素人なりに積みはじめた。赤土が流失した形跡が、路面を雨後変色させている。石組みをその防波堤にしようと言うと、「とーい」の砂川さんもそういう所がハブの巣になると。
身近に生々しい危険が潜んでいると、暮らしは律されたものになって好ましい──この発泡状の空間に彼らの子どもが育つと、近寄らなければ見えないサイズの注意書をしよう。
足の爪を切るのに難儀する腰の持ち主に、土方しごとはかえってクスリかもしれない。
山につたう道に椰子が13本あるのを数えて、全部いたたくことにした。万博流行りの高度成長期には一本100000円だったというそれは、島のそこここに絨毯状に延している。写真のものは最後の一列の売れ残り、一本ン万円でよいと。
椰子は夏に移植すると、植木屋は言う。メリハリのない島にも植え時はあるだろうが、何故か?
港のマンションにも来る可愛い声で唄うコトリが、あらわになったガレの裏の虫を期待している。大きな音をたてても、こんなときは驚きもしない鳴きもしない。静かな監督を、頭上に戴いた2015年最後の日のことだ。