尾、犬が西を向いても 改稿/残像

靴ヒモを結べば羽根が二枚に、触角のようなものが二本たれ下がる。普通の蝶結びを言葉にすれば、こういうことだ。「盛る」スニーカーの第一歩はその「触角」の、数を増やすことからはじまっている。

左右どちらか方向を揃えて流し、その数がさらに増えるなら流れる向きを反対に変えて、アクセントにしてきた。

助手のひとりが二年もして初めて自分のスニーカーに、自分用に結んだのは履き古した白。洗い晒して、大振りな四ミリロープも生ナリ。

端にわずかに表情をつけて、尻尾はなし。しばらく履いてきて、足許に落とす目が慣れたのだろう。両側に振り分けるように、左右に一本づつだけ尻尾を付け足した。

ガニ股状に外側に脚の開きが強調されて、再考の余地はないか? うーん、と彼女は言って脚を組む。すると二つの尻尾は内を向いて、足許をしおらしい風情に変えるのだった。

靴は振り子。静止したものとして存在してはいず脚の先についた振り子を思い浮かべれば、足のうらと地球とのあいだに挟まって旅をする。