ゆきはぐれたかぜ、ひきかえすかぜ。

特徴的な形のこの丘にきっと名前があるだろうと、稀人は思うだろう。彼が実は月並みな旅人なら、鉢伏山かなとこたえるかもしれない。

峠まで上ってきた道を、振り返りたくなるほど疲れました。一帯を覆った草はらが、遥かに風が先を迷った形をしている。

風は引き返したであろうか?と、旅行者は思った。ゆきはぐれたかぜ、ひきかえすかぜ、どちらも風越峠の鞍部に憩う日はない。