変わらないテンションを維持する。

変わらないテンションを維持する──。これがこの四〇年来、難しかった。ジンセーの話ではない。肌に優しいロープで編んで載れば沈んで、身体を水平にする就寝体勢にならない。伸びないハードロープ(ポリエチレン)で編めば横たえた身体を跳ね返すほどで、腰は折れないかわりにとても心を許して身を任せられるハンモックとは言えない──。

どちらであれ、ほんの15分ばかりのブランコ遊びなら面白いバランス遊具だろう。手に入れたモノの期待はどうあれ、この国でハンモックはそういう流通をしている。  

使われ方はその出来を正直に反映したもので、それ以上のハンモック自体にもニーズにもお目にかかったことはない。据え置き型の吊りスタンドで日常の実用に耐える仕様を望めば、相当な重量物になって「お手軽な自立ハンモック・スタンド」からかけ離れたものになってしまう。島でこうした「足が地に着かない意図」のハンモックに触れる機会も、私が島に来て八年の間にぐっと増えた。問題はここからだ。朝まで眠るハンモック、寝具として再評価をもとめる……には。

埋立地に建った三つ目の別荘目的のマンション住人の、ベランダを見に出かけた。アンカーボルトに代わって、ハンモックを吊るす工夫はないか?と仰るのだ。吊り金具は貫通構造出なけれは駄目で通してきたが、ケミカルアンカーを管理会社が認めてくれない……なんて言っている。
認めないんじゃない、気泡で軽量化した外壁にアンカーなんか効かないのだ。芯材から生えた取り付け金具がリゾートマンションに常設される日まで、待つべきだと思って時間が立ってしまった。樹に吊る、なけれは苗を植えて一〇年後に寝よ。こう言ってきたが、先のマンション住人の為にひとつ作る気になった。

無人で風にそよいでいる時も、100キロ超のデブが身を横たえた時も、変わらないテンションで木陰に吊られているハンモック──。ハンモックの手編みを始めた四〇年来の自己矛盾に向かい合った、これを解答としてよいだろう。

「TYPE ・3」として年内発表の図録でお目にかけるものが、写真。ぜひ対面してお話ししたい。縁ロープは四パーツに分かれている。