パンダナス

パンダナスという植物名は石垣島ではまったく通じないが、写真左奥の手提げは「唐蔓擬き」という和名で言われている。
私の結び仕事の派生型のひとつ「取っ手巻き」は、アケビを素材にしてきた。ところを南島に移して、新しい素材に目移りした。もっともアケビは、南の島にはない。

まず手にしたガジュマルをしつらえて乾燥させるとシワシワに縮んで、情けない土瓶になってしまった。高温多湿でよく育ったレモングラスを、大量に収穫した。砧型の木槌を持ってきている。

生乾きでよく鞣したが稲科の中でレモングラスは特に、柔軟性が回復しない。苦労して草履を編んでみた。満足できる出来にならなかった。

唐蔓擬きを島の人に教えてもらった。これを三枚に剥ぐのは、簡単でない。写真左奥の手提げが、唐蔓擬きで作ったもの。自作でない。

唐蔓擬きをマルのまま使うというテもあるだろうが、島では見かけない。桃里の私のアコウの森に自生しているので、宿題を後回しにしている。

で、本題のパンダナス。陸棲と海棲の区別があって、気根は海棲のものから採取した。陸棲のものの気根は着床の条件がよいので、中空でほどよく長じたものは多くない。

土瓶本体の作陶も手提げのかご編みも人任せで、もっぱら取っ手や提げ手篭の巻きに限った仕事だ。パンダナスのかごの編み手として、島で知られた方に頼んでいる。

龍舌蘭のロープ(サイザル)で編みつけてみたのが、写真前の三つ。篭は三サイズあって、ロープの太さを微妙に相対させる。湯通しして脂分を抜いたついでに、色染めしたがカラー取っ手はとりやめ。棄ててしまって写真の手提げは、もうない。

パンダナス手提げを数作るときは篭と色ミを合わせて染めたサイザル、唐蔓擬きの篭はレモングラスで太くかさまししてパンダナスの気根で巻くことにします。

――パンダナスの葉で結んだカゴに龍舌蘭で縒った手提げ、――唐蔓擬きで編んだカゴにレモングラスパンダナスの気根で巻いた手提げ。
二種類の手提げは、こう長々とお品書きされることになる。




月桃の葉、棕櫚のようなクロツグ。用途の似た島材は、あと二つ。