えいこ鮮魚店

旅行者が予約して入る店、になって足が遠退いた。えいこさんの魚屋?と思う、事情を知らない人は今ではいない。

全席に「予約席」の札が載っている。口開けに暖簾をくぐってかつての「いつもの席」に着くと、初見の店員がやってきて予約の有無を問い質す。

お待ちくださいと言って奥へ下がるが、構わない。一〇カンとナマを持ってきて。
七時半までですがいいですか?
待てと言った後は「お待たせしました」と引き取るのが普通だが、それは言うまい。まだ五時半、六時には帰ります。本当は鯖の焼いた押し寿司が今日はないか、訊きたかった……。

今ではたまに夕食に寄るとえいこ鮮魚店では、こんなやりとりで毎度デバナを挫かれる。

ナマが取っ手上位であることは、今でも変わりない。