レンゲ畑で会いましょう

 2009年は1月7日、起こし残した水田をトラクタで起こした。この日がことしの私の歳のはじめだ。機械仕掛けの田起こしだがその日、我が田に山の神は田に降りて田の神になる。ヨリシロは何であろうかと激しく振動するトラクタに着座して、高みより三六○度を見回した。
 田の隅に池を掘ったろうと思いついているので、腹積もりに柳を二本植えた。その若苗でどうだろう。幼い柳はまだピンと、空を突いている。
 あるいは冬ごし中の檸檬グラスの藁つづみ。二○も並んでいるので、これをヨリシロにすれば八艘跳びしたりして田の神も飽きないだろう。

 周辺は高い低い家々に囲まれて、田起こしの頃に馴染みの白い山々を隠してしまった。トラクタで描く帯を乱して迷走してビューポイントを探すと、わずかに白い頭がのぞいた。
 伊吹山だ、背後に鈴鹿山系を従えているだろう。さらにどれだけ田で迷走を繰り返しても、御嶽山の見えるポイントはなかった。

 初春の田起こしのこの日に未耕作地を一枚とっておいたわけだが、ほかは昨秋の収穫に間もなく起こしてレンゲを蒔いてある。私にははじめてのことで、一反につき6キロが多いのか少ないのか分からない。
 地面に顔を寄せてみると寒風に耐えた幼いレンゲが、赤ら顔をそろえているのがわかった。「藁に始まる」の第一プログラムは、レンゲ畑で会いましょう!という言葉ではじめましょう。