「やぎとカメ」

手編みハンモック石垣石垣スタジオと称しているマンションは日航八重山ホテルの向いにあって、その奥は一筋奥といわずもう緑の畑をもつ隣家の裏庭になっている。カメというには口の小さな、ひとかかえもある焼き締めの大壺が二つ転がしてある。飼い犬が畑につながれたヤギのご機嫌をうかがいにくるのを、出掛けにしばらく見てしまった。

こんなネタを思い出す。猫が高価な器で餌を食ってるのを見て、飼い主を訪ねた男が言う。この猫を売っていてだきたい。金を受け渡す段になって、彼はこう言うのだ「馴れたエサ鉢だからついでにもらっていく」。
飼い主は首を振って、とんでもない。飼い主はその値打ちを知っていたと分かって、男は引き下がりつつ訳を尋ねると……。これでエサをやっていると、ときどき猫が売れまんねゃ。

与那国の飛行場から遠くないところに、ホテルっぽいホテルがあった。(ボクはこっそり風呂に入りに行っただけだけどネ)。誰だったかな、絵を描く役者の大作もロビーの目障りだったが、壺屋のツボを並べるディスプレーも嘘臭い。

私は火焔土器がいちばん好きだ。アイソトープ法で時代測定すると、4500年の時間を越えて我々の心にモノゆえの直接性(唐突だがモノ言語と名付けよう。このブログはスマートフォンというケータイから送稿している半端な書きっぱなしのものです)が、なす術もない気持ち良いスタンスを現代人に可能とするのです。

俺ならこうは並べないぞ、焼きものはそんなものじゃない。そう思ったものだが。ではどう置く?
マンション花水木に隣接したお宅の裏庭でもある畑の、ヤギと黒犬とツボを見ていると答はあるような気がしてくる。

与那国のユキさんは私がいちばん通った伊良湖(渥美半島=愛知県)の、太平洋ロング・ビーチに属する赤羽根で開かれる次回「漂流物学会」の、参加申込書を見せてくれた。与那国で拾った流木はこうするためだったと、いずれ持参して話す。あのカレーをまた食べながらね。