「パイオニアアパートにて」

前後の土日に始終さ迷う祭が当たり前のように思っているが、この島では違う。苗田の安定期にやってきたのは、爬龍の次の日だった。
小さな部屋に満載のハンモックをやっと整理して、横になることができる。ベランダはまだ流木で、物干しもままならない。手三里のポイントが、最近ひどく痛い。
どこからか赤い玉か煙が出る話もあるが、手編みにも限度があるだろう。五〇〇本は編めまい。玉だかケムだか知らないが、打ち止めを告げる印しをいずれ見たいものだ。

左回し上から巴……と呼ぶべき「バック・ノット」が、次の写真である。みぎ、ひだり、上から、下からの四通りの端始末が論理的に考えられるが、自称「左回し上から巴」が端(アタマ)が小さい。個展に出したハンモックを整理しながらテープで間に合わせで仮止めしてあったロープの端を、気がつくと細工している。箸さえ重い。

島の農業資材店で細ロープを一玉買った。ロープはふつう3ミリからの名称で、2ミリまでは「タコ紐」と呼んでいる。
製綱時にドラムに巻くので、玉の大きさを揃えると太さや素材によって重量はまちまちだ。そこで製品表示は、重量で示される。これは芯が詰まっているから、一玉で500メートル近くあるのではないか。大男が寝れるハンモックが三つ編める。

アップ写真で分かるかどうか、軟質ビニールを引き出して成形して綿糸を巻いた三ヨリロープになっている。ハウスで見るもので耐水強度の点から心材に合成樹脂を使い、植物の蔓などとの相性を考えて綿糸の外皮をまとっているのだろう。人肌にも気持ちのよいハンモックになるに違いない。

聞けばこの島ではマンゴーを支えるのに使われるものだそうだ。ことによるといちじく栽培のように、マンゴーは虐められているのではないか。このロープで……。痛い腕をさすりながら、余計なことを思いついたら、明日にも確かめに行きたくなった。