三つめの島土産

いかにも武骨なブランド「土牛」の楔を三サイズ持ち帰った。さがせばどこでも見つかるだろうが、島で買う気になった。農・工具の柄をすげ替えるにあたって、新調した。大一つ320円、中二つ315円、小二つで230円。小で大人の小指ほどの大きさである。
石垣は空梅雨の爽快晴天つづきだったが、那覇で給油するときにはもう天気はくずれてはじめていた。雨音に一夜明けて、潤う水田を見舞ったら今日すべき仕事をさがすことになった。
楔はテーパーに段々がほどこされていて、それぞれに逆傾斜のカエシが特許なんだとパッケージは主張する。さてどんなものか、島から帰った翌日さっそく備中を一本すげ替えてみた。なかなか具合いがいいぞ!

備中にかぎらず柄をすげ替えるのは、思いのほか深みのある作業だとすればするほど思うのは私だけではないだろう。柄の傷、その曲がり具合い減り方。楔修復の痕跡……。備中にかぎっていえば刃の片減りが、主の利き腕を想像させる。すげ替えた備中を振るってみれば、柄の取り付く角度からその人の上背に思いが及ぶのだった。
野加治の跡などさすってみるなら、レントゲン写真で骨折の古傷に再会した心地なぞする。柄をあらためて口に合わせて削りなおすことになるが、ざっくりノコで切るならその切片も堅くてよい木製の補助楔に再利用出来るかもしれないから、すぐ捨ててはいけないな。

晴れて乾燥すれば、ゆるむ。いかに堅木であっても雨の日に柄のすげ替えをしたものかどうか、ヒトは何千年も悩ましく思ってきたのだろうか。
今日はゆっくり休もう。