魚影

木曾川から取水した農業用水はこの地では、市街地で暗渠となって見え隠れしてやがては伊勢湾にそそぐことになttげいる。中干し期に入っても夏空は回復せず、水量は衰えない。線路脇に顔を出した水路を覗いてそう思っていると、久しぶりかに魚影をみとめる。
センパラはいないか? フナより胴に丸みがあって、モロコ。目測だが自分の指とくらべて、大きさを正確に測ろうとする。七センチだな。川で殺生に凝ったのは、年中さんのことだ。
この川で「おじいちゃん、今日はアカモツが釣れたわ」、そう言った自分の声が今も耳に残っているような気がする。この川のどこにも蓋などなかった五〇余年も前のことだ。