Yの誘惑

徳欽県巨水村(雲南省)チベット族脱穀木爪、草又鍬、えぶり。櫛状のもの木爪の、竹製の千歯こきと同じだ。「雲南農耕文化の起源」第一書房
Yの誘惑を初めて自覚したのは、リトルワールドのポリネシアの家に敷いてある珊瑚を拾いにいったときだった。収穫物を机に拡げて悦に入っていると、Y字に開いた珊瑚が多くあることに気づいた。
またある日、屋敷の枝うちの始末をしようと焚火の用意をしていると、二股に分かれた部分が惜しくなってYの字に切り取って残すことにした。パチンコ(当地ではゴムかん)を作らにゃいかんな、と思ったことだった。忌ま忌ましいカラスでも撃ってやろう。思っただけだった。
前掲書が前文で物質文化と言っている道具への呼びかけが、私の体内でなされた。
Yの珊瑚は銀の留め具に提げたネックレスにして、和美に贈ってやった。一頃ずっと着けていたが、鎖骨の辺りがごろごろするからふくよかな胸に似合うだろうと思うことがあった。