三泊四日

30度以上にはベッドを起こすなという姿勢で強いられた体験入院は、四日でまぬかれることができた。背中はいくらかマシ程度にすぎないが、単身退院してよろよろ歩いていく先はコーヒー屋であります。
歩行困難者に最寄りのコーヒー屋は、マックだった。退室のおり、TVが映していたのは国外のTV局が制作したドキュメンタリーだった。フロリダの整った住宅街で理・美容院を営む女性、不況が影を落としている。彼女は店をサロンのようにしたいと思っていて、実際かわるがわる断髪を済ませたひとはすぐ去らずに話し込んでいく。
客は長い常連ばかりで、六〇前後の彼女の年格好を反映したものだ。話される内容はどれも失職と求職活動についてで、どの人もえらくキャリアがあったり特別高い職能技術が語られたりするが思わしくない。
番組はあのあと、雑多な技術革新がある地点で飛躍的にジャンプするポイントで落伍する現代的な寓話を描き出したろうか。新品のパジャマが三つも入った手提げを引きずって、病院をあとにした。
背中が痛む、「飛躍的にジャンプ」かw(゜o゜)w……。

コーヒーのフタとミルクと掻き回す棒、それから紙ナプキンはいらない。こういうところでコーヒーを飲むときは、こう言わねばならない面倒臭さ。トレーの敷物も要るわけでないが、それでは従業員を困らせることになるだろう。そこには六人分の手書きのコメントが、顔写真つきで印刷されていた。字の下手くそが六人揃うことは、どれくらい稀か。
長嘆息はそんなことじゃない。歴史が積み上げられる時代は、この国では終ったと言える。