最後の一本

フォークリフトがそのフォークで荷を掬い上げられるように、荷の台座にはゲタをはかせてある。
台座はパレットと呼ばれていて港や鉄道・トラックターミナルの使役で使われる光景は見馴れたものだが、木製のパレットを見ることは少なくなった。

下に隙間を作るためのゲタ(かませ)が合板を厚く重ねたベニヤであることは、この国から出ていく荷にはないのではないか。

ナツが加えてきた流木のなかでそんな加工材は、これだけ。断面の径は70×70ミリ。全長は700ミリ、これをはがして張り棒にした。
ナツが遺した……シリーズの最後の一本を、今日編み終えた。

非常に堅牢なネットだけのものにしておいた。周囲には麻の9ミリを、湯通しして使った。ネット本体は3ミリの純綿ロープ、お茶や雑草とか一部化学染料で染めた端切れもつないで編んである。

潮で傷んだ合板は先端をクレオソートに浸けた。