麦の穂をゆらす風

よい印象を残した映画は耳に入った役者や監督の記憶がなかなか消えないものだが、予断なく物語に接するにはその名さえ邪魔なものだというのが私の映画の楽しみ方です。

わずかなスチール写真や背表紙の惹句、題が頼りだから外れも多いがそれがなんだ。まだじかんはある、私は観たい映画はじぶんで選ぶ誰にも邪魔されずに。

心にしみた映画を見終わったら、役者のコジンジョーホーを即刻忘れるコトニシテオル。


さて麦の穂を……、大英帝国ブリテンの周囲に小英帝国を従えて成立していたわけだが、一番近い隣島でもつい先日まで闘争が続いていた。
いたと過去形で言ってよいものか。消費生活がなしくずしてしまったものか。

壁を背に独立柱が埋まっている。深さはかんぬき状の構造でなくドブ付けなら、1・5メートルは掘られただろう。銃弾に崩れても、びくともしない。
アイルランド民兵が銃殺刑の、様式を自分のものにしているだろうか?
後ろ手に縛って、胸に的を布切れで留める。両胸に付けようとするのを断る、彼は弟である。

近親憎悪のような内戦を硬質に描ききったが、エール共和国からはるか離れた世界中に帝国の悲惨をまきちらした視点はこの映画にはない。

深い洞察は目配りに欠けるものばかりか?

兄の号令で銃弾がその胸に到達すると独立柱に負荷がかかるが、手首の自由を奪っていたロープは簡単に柱からほどける結びが施されているのである。
引き解け結びとその手管をよんでいる、先の一冊で英名はなんであるか調べてみる。