ワレモノ

島へ荷を送る機会に、あれこれ詰め物をする。
すぐ要るものでないが、隙間があるならというわけである。

タコひもと言ってもよい細さのロープはその直径で表すほか、寄り合わせた糸の数で呼ばれることがあるようだ。

赤ちゃんのハンモックのために、直径二ミリ三ミリの純綿ロープを差出人本人で送ってから来た。

はたして荷をほどくと各々、20/75と20/120と表書きしてあった。
20は糸の番手、75や120は縒り合わせた本数なんだろう。

縒りはしなやかで染めたら、どんな色でもきっとよい発色になるようなきがする。

工場で触ってみていままでの綿ロープと表記が違うだけでないね?

分かったような顔で尋ねると、あれらはスフがはいったからね。


隙間に押し込んだ器が割れていたが、そのままにする。
か、昼寝のあとで接いでみたくなった。
宇賀和子の取っ手が仙人掌のつぼみのようなカップ、鋳込みの擂り鉢の注器。
接いで自分用にすればよい、台風接近の午後にふさわしい仕事。


標題を忘れるところだった。割れた器の底に、生まれたてのカマキリがふたつ収まっていた。
荷づくられるまえに「器の森」に迷いこんで、幼い命を散らしたものだろう。

お絵描き教室をしたむかし、生まれ出たカマキリの赤ちゃんの数を数えたことがある。
励まし励まししたが、三〇〇まで辿り着けなかった。

昇天してから二〇〇〇キロ近く空を飛んだものだか、亜熱帯の土にこれからなる。

だれかれのモノであれ、コワレモノに違いない。慎ましく生きようと、殊勝な感想。