忘れる

離島桟橋から潮風のあたる501の緑は、ことごとく絶えた。いままた五階へ到達したパイオニアツリーが枯れて、双葉だけが緑を保っている。
その先を裁って、双葉に切り戻してみた。せんないことである。
なにやら切り口には、分かれた突起のようなものが見えるのである。

逝った子はお腹のなかに還っていった、と言ったひとの言いぐさを思い出した。
この先のない双葉の時間は、見届けてやってかまわない。

地上のギャラリーの塀のすきまでは、立派なオクラが結実した。もう一もとは、花が散ってしまったら何の木やら思い出せないのである。