廃ロープ

使い込まれて絞まって少し痩せて見えるから、径は14ミリかもしれない。
こんな汗も油も染み込んだ電気屋のロープが、この十倍もある。撚りはもともと堅くて、端始末には素手で取りかかりたくない。

一巻は40メートルくらいある。一度も処分したことはない。使ってもいないが、ふと今夜洗ってみようと思う。
ひとつ十等分にきりわけてみた。漂白剤で少し、弱らせてやろう。
結びの見本額(日本風に言えば)という定番があるが、廃ロープや漂着ロープが素性だったらどうだろう。

田圃をつぶして建てた貸倉庫の家賃を踏み倒して消えた電気屋の置き土産、電柱を引いていくような大がかりな連中だった。
ロープの行く末を知らせる術もない。