町の田に川は流れる

ハンモックが亜熱帯の道具ゆえのオキナワ指向だったが、しばしばナカソネミキを思い出すことがあった。川は流れ〜るのくだり、意味なく顎をひとつ余分に開閉した唱法の癖を。無声音のこぶし……とでもいえばよいか。

病葉ってのも耳から理解できなかったが、都市近郊の水田であってみれば川は定規でひいた用水で水門は計算ずくで、そりゃあ川はちゃっちゃと流れるだろうよと小学生の私は思った。

高所からの眺めはビルの狭間を行き交う人や車は、まるで街の谷を流れる川のようだとは思いもよらなかった。聴いてみたいな、今の彼女の「川は流れる」を。