八本クロス

島を離れる度にロープメーカーを訪ねて、追加発注をしている。島は魚網の需要からロープ素材が比較的豊富だが、ハンモックのデリケートなニーズに応える品質には満足していない。

濡れても平気なポリエステルロープを使う機会が増えたが、ヨリに不満がある。ハンモックを編むためのポリエステルロープなぞ、もともとこの国には存在しないのだ。要求通りのヨリでつくってもらうには、どれくらいの発注量が必要か……これがこのたび名古屋製綱を訪ねた理由だ。
板張りの体育館の作業場とは違う棟の、倉庫の隅でひとり八本クロスね端始末をしている手先をじっと観察したくて背後から忍び寄った。

東シナ海から流れ着いた同んなじような八本クロスロープを、島で拾ってパナリに持ち帰ったところだった。
ちょうど15ミリ8本クロスって感じで、よく似たものだ。
島にもどったらさっそく、覚えたてのバックノットを試してみる。時計回りで折り返しは右とも左とも言える、左右に交差させて四つ巴に折り返すからだ。

バックノットやアイスプライスが有効なくらいのヨリの三ミリポリエステルロープ、一色につき1000巻き6本単位で。つまり6000メートルづつあるから、各色30本はハンモックができる勘定だ。商売抜き?でしょうね。
マニラ麻を注文してくるのは自衛隊海上保安庁だけだという話は、また。