カフカの早苗

早いの接頭語のついた稲の門出となる早苗という語には、青田に吹きわたる五月の風を思い出させる。平篭を天秤で揺らして、畔をゆく。
葉先を振って苗の束を、その足りない辺りに投げる。

家族は一〇人いて草の上の昼食は、うちは人参の混ぜご飯が多かった。つぶした鶏がないときは、具は鯖缶だったが、腰を上げるときはお櫃の底がみえた。

私は乳母車をようやく這い出たばかりで、所在なくすすきの新芽で指をきったりした。

カフカの早苗はまだ根づきが悪いのか、自立おぼつかず。