三点吊りをほどく。

全幅1600のダブル・ハンモックが、ギャラリーの天井に張り付くように吊ってある。張り棒は二つ割りにして、両端三角部分(※)を解かずに取り外せて洗える仕組みの一号試作。

クラシックな帆船が使っていた動滑車をかませてあって、何かの取材に来た記者を何人かを天井を間近に拝ませてやった。総ネットの長大なもの、載せる役ばっかりで自分が拝んだことはない。

浸水にこりて床をかさあげしたが、それでも天井は3470の高さにあってさぞや……。このひとつを除いて、三点吊りのハンモックをすべて解いた。

三点吊りのハンモックはかって中央に大穴を、ひとつ余分にあけていた。近作はその必要がない共通の、構造上の工夫がなされている。いずれ詳しく図示するが当面三点吊りを再考するので、その機会も先送りする。

構造上に難点はないのだがこれが成り立つ環境の方に問題が多すぎて、ハンモックの方が可愛そうだから。動滑車はをもうひとつ連ねれば、200キロのライターだって私ひとりの素手でなんということはない(もっとも実際に吊り上げた経験は137キロまでしかないが)。

だがそれはネット全体でその重量を受け止めればの話で、わずか三ミリのロープの一点の耐性なぞ知れたものだ。三点吊りの「墜ちない」構造のハンモックが、皮肉なことに踵で踏み抜けてしまう……。

作法を説く以外にない……三点吊りのハンモックをこのひとつを除いて、解く理由とはこういうわけだ。


※ 三角部分を今後は「両端を絞って吊り構造をしつらえる」と言うことにする。

金属リングを使えばこの「吊り構造」はそれまでだが、私は金具を一切廃してきた。したがって吊り構造は、次の四パターン。
1、投げ輪状の独立リングをひばり結びにする。
2、アイ・スプライスを同様にひばり結びにして、吊り先を取り出したもの。
3、2を逆に用いてひとえ継ぎで取り付けたのが、吊り先を延長した吊り構造である。
4、ぐるりに渡す太ロープと本体ネットが両端に集約されて吊り構造となるわけだが、太ロープを二巻きしてひばり結びのようにくぐらすと二重の吊り輪になる。これは言葉でうまく表現できない妙案であって、図解にご期待いただきたい。私の28年目になるハンモック仕事の初期の助手をだった高木かおりの思い付きであって、これを「タイプ・かおり」と名付けている。