卒業記念の置き土産に。

卒業生が三桁に及ぶ島の小学校もあるのだが、その子はその小学校の今年の唯一の卒業生。去年は三人だったが、来年もまた一人になるだろうと彼女は言う。この話が、次にも繋がるように願っている。その話とは……。

去年の卒業生たちは何かスローガンというかメッセージを看板に描いて、卒業記念をのこしたのだそうだ。今年のその子はハンモックを編んで贈りたいが、その手編みを教えてくれる人はどこにいるかと言っている。

……こんな伝言を、運んできた方があった。校庭のガジユマルの枝に、残して卒業したいと言っている。校庭の一段高いところから、遠くに水平線が霞んでいる。島内ばかりか、その属する県下最高峰の山ふところに小学校はある。

生徒総数は、両手で数えられるほど。まずはガジユマルの
木を見に行きます。挨拶をすますと、ちょうどホラ、休みの今日もいま動物舎にエサやりに向かっているあの子ですと先生は言う。

遠くに目にして、今日は声をかけるのはやめておきます。ガジユマルを一巡りして去った。

動物小屋には彼女個人が飼っている馬と山羊、それからみんなの軍鶏がいる。山羊には名前はないが、三歳馬が弥生というのは生まれ月に由来すると翌週ハンモックを習いにきた彼女は言った。

私は別の感想を持ったので、山羊には名前はないのかときいてみてその訳を慮った。多分そういうことだろう。

毎土曜二回編んでつぎの土曜日にハンモックは、小学校の樹下に二本お目見えする。ひとつは私からのもので、できばえを手加減できなかった。これがまた「善き思い出」に 、代わることもあるだろう。