左右の小さな差異 00091‘ 00092‘ついてもう少し。

つま先から通していけば甲の方に上って最後に紐通しルーブを潜らせる、その直前だけ右と左で「内から外へ」と「外から内へ」と 小さな 差異を設けた。

ここが何かしら信仰と関係している──気がするのだ。いま、小さな「差異を設けた」と書いてみた。これは正確には虚偽で、製作者の意図が介在しているかどうか我ながら疑わしい。

退屈な話を続けているかもしれないが、「こうなってしまった」のだ。しばらくしてからそれが判ると、不思議な気持ちになる。そのように手が動いてしまった──こう言いいた遙か太古の女性ひとりを、脳裏に描いてのことだ。1950年代から60年にかけてデュッセルドルフ芸大に学んだ日独ふたりの少女は、この突飛な物言いを笑わないだろう。お目にかかったときには、元少女でいらっしゃいましたが。

なにか自分でないモノが手を動かしている──誰あろうルーシーなら、きっと肯くだろう。私たちふたりは318万年も時を隔てた二足歩行者である。我々は立ちあがって、歩行から上肢を解放した――ことに。