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艦橋が甲板の端に、寄った民間の船は見ない。災害救援訓練に参加する一員に自衛隊、そんな涙ぐましいやり方をしなければならない。

軍用タグボートがゆっくりと、低倍率の双眼鏡の視界に入ってきた。接岸中のフェリー与那国の並びに、停泊。その理由はないのだが、島の人々の目に馴染ませるミッション。それも必要なことだ。

ご苦労様という空気に、島は欠ける。

同型艦が二ついて、湾内を緩やかに移動した。艦橋が寄った母艦脇に帰っていく往路はスピードが、静かだが緩急けた外れ。もっとおごそかに動く方がよい。