背負えるもの

伊野田「アコウの森」に入門するものは、自力で来い。ヒッチハイクも芸のうち、可。
もう一点、二度使わない飲食物の容器の持ち込みを認めない。

言うてまえ三度ヒザの水を抜いた身だが時間を計って、伊野田から石垣空港ロビーまでの所要時間をたしかめてみた。左足のストロークは不完全だが、痛みをこらえて──というほどではない。

しかし、休まず歩き通した。しばしば道草は食ったけどね。バッタの休む南国華の名をまだ、知らない。バッタだってイナゴとショウリョウバッタがおんぶバッタだというくらい。

孤独なアサガオはブルーハワイなんていう宿根草でなく、慎ましい見なれたものだ。咲き遅れた一輪であろうか?

車の距離計によれば10キロたらず、私の足では二時間四〇分であった。飛行場から北へ、また西下して市街地へたびたび半日がかりで歩いたものだがタイムを意識したことはなかった。旧飛行場は市街地にあって、よほど荷をかついでてもタクシーに乗らない。さて伊野田小から三つ目の坂を昇りきると、三和へのT字路が現れてようやく飛行場が見える。

しかしここから空港ロビー内まで、45分はみておきたい。キリトオシ不十分のお陰でこの坂部分だけ歩道が一段たかく区分けされていて、草刈がなされた時期なら視点も清々しい。あいにく夏も過ぎて、ぞうりでは気持ちの悪い草叢を踏んだ。

想定しているコースは逆で、飛行場から伊野田へ向かってもらう。帰りは車で送る。意図を後に示す。

ロング散歩は、これで終わりにしなければならない身の上だ。。飛行場への導入路がエリアに到達すると、歩道が途切れる。計画外に設置された顔した変圧ボックスが邪魔をしていて、ひとつで済むはずの横断歩道を余分に歩行者に強いる。

まずタクシーのたまり場があり、競ってガソリンを焚き続ける。連中がエンジンを切りたくなる程度に、ガソリンを高くするとよい。その日は来る。

その先が自家用車の横付け位置で、ずっと先がバス乗り場。冷遇の度合いをアクセスの視点から並べれば、歩行者・バス移動者・自家用車・タクシー。この序列は
まったくサカサマだと飛行場ができたときから、私は思っています。

島に歩いて飛行場に出入りする人はいないが、旅行者のいくらかはそうではない。想像力こそ思いやりだナ。表題は「背負えるもの」だった。こうして三時間ちかく歩くと思えば、旅行者の手荷物も土産もひどく洗練されるに違いない、と。この後わずかな時間を共に過ごす選ばれた者に、これを科す。