たてよこ

陸路海路で運びいれた墓石バナナに持たせかけたまま、歳を越そうかとしていた。物取りにかの地に出掛けてそれが、自立しているのに恐れ入った。

隣家の元地主に草刈りなぞ頼んだ矢先、見かねて諌めたものか。運ぶはおろか一人で起こすのも、骨のおれる代物。

かねて言う通り墓などと、思っちゃいない。ごくちかしい者の名が刻まれた石柱を、置き去りに出来なかったのだ。

ギャラリースタッフ・Mが草引きに現れてかくしかと恐縮していると言えば、私が建てたと言う。! 重かったでしょう?

来る日、ふたたび横たえて土を被せて、ちょっと地面が盛り上がってるナ──くらいが〆めだとだれにも言っていない。土中に名の彫られた石がどのくらいそのままであり続けるか、思いめぐらす日没である。

よく立っていられるなと思えるヒゲ根で立っているバナナ、その下に埋めたものなどない。