ヨットT七世号の双胴間転落防止ネット

紙面で再会したT七世号のセーフティ・ネット、寝そべる子ども。ハンモックに換算すると大人サイズのハンモック12本分のネットを編みつけて、オーナーにこういう写真を撮らせるなと私は言った。

製作費をいくらで請け負うかは、明言しなかった。双胴ヨットの隙間に私が編めば、現場仕事で二人で三日。海運事業の社長さんが注文主なら、モノを見て値段は決めさせたらよい。

安全な公園の遊具ではない、海の上で目的を果たす道具。トランポリンの真似をするウケのよい写真が出回るのが、一番よくない。云々――。

離島桟橋のターミナルに事務所のある社長さんにはトーキョーのアート系の大学出の彼からすれば若い彼女を脇に置いて、従業員の眉をひそめさせているハナシも聞く。

まずは彼女を、正統的なハンモック・ファンに仕立てるべく意を尽くしたつもりだったが……。大失敗。そんな使い方をされては、安全の責任を持てない。金はいらない、外して返せ。素人に解けない。ハサミで切り取ってよいからと言うと、彼女はなぜか三万円を持参した。三ミリ二本どりで、5000メートル以上。ロープ代にも足りない。

二年前の夏のことだ。現状、新聞写真ではよく分からない。知りたくもない。相手を代えて双胴船に、もう一度編みたい……。そんな残尿感(もう少しよい例えはないかな?)のようなものが残った。島の野球部の、バックネットくらいのスケール。だとするとそうとう大きな帆船だな……。