風景が育つ時間

かつては競輪選手だったAは話題が豊富で島に来てわずかの私に、いろんな話をしてくれたものだ。あれから郊外にアコウの森のある山肌を買って、ハンモックの屋外エリアを作るのだ。

島は久しぶりだが明日もう帰ると言うので、そこを初見のAを案内した。写真の背景散乱、椰子の並木。お向かいの造園屋から挨拶がわりに買った、不良在庫の一〇年もの。二〇年も経っていただろうか?

一列横隊に生まれて育つ木はないが、それから三年でこのさりげなさ。のびのび立っている。そろそろ列を崩してもよかろう――、すらりと伸びた幹に手をやり見上げて言った。

Aは言う。あす朝のピーチ、飛ぶかな? 今夜台風がいらっしゃる。