削り遊び

市内一等地はいつからか空き地で全日のプロレスの興行に使われたりしていたが、最近レクサスのショウルームができた。俺がやくざならこんな事務所にするな……と思わせる、サイコーに下品な店構えで笑わせる。
それは並走する新旧ルート19に直角に市内最大商店街が交わる地点である。その新旧街道に挟まれてややはずれた辺りの「ラドン温泉」と大描きされた煙突の認視度はレクサス劣らないが、これがいまも稼動中であることはどうであろうか?

通り掛かりにふとラドン温泉に入ってみる人は多くないだろうが、私はその少数派に属しておりまする。風呂屋の駐車場には案外レクサスが停まっていたりするが、ここではおばあちゃんの歩行器が駐車している。
市内に現存する銭湯らしい銭湯といえば、ここと「春日井温泉」を残すのみである。駐車場の隅に木造家屋の廃材といわず、だれかが苦労して切ったギザギザの切り株とか燃えでのない製材所の木っ端……といったタキモンが山積みしてあったことを思い出した。
築・七〇年の細々とした野地板やコマイの竹は自宅で灰にしている。灰は畑に撒けるものだがこんなことに取り組んだこの半年の間に、消防車やらお巡り市役所の環境どうとか部の者どもが入れ代わりやって来る。

はいはいと始末書に署名したり時には声を荒げたりして受け流して止めないが、棟に上がっている丸太はそうはいかない。人力で上げたものなら人力で降ろせないはずはないんだが……とため息をついていると、ユニックを載せた車で吊ってあげましょうか休みの日にだけどと言ってくれる人があった。この路線を待っていた。ラドン温泉も歓迎とのこと、しかしもう私もこの歳ヒトヒロに切ってきてもらいたいと、主は言うのだった。
板ものとなるとことは違って、惜しい気になる。親しい大工の仕事場を留守中に襲い、あてもなく古材にカンナをかけて悦に入っている。注意したはずだが抜き残った古釘をかじっていて仕事にならん、刃を換えたと言われたりしているのである。