ブックオフで

サンテ3箱だからミカン箱なら6杯くらい、子が遺した古本を持ち込んだ。ゴミを持ち込まれても迷惑だろうと、先のコロコロなど雑誌だけでなく単行本も相当減量した揚げ句のことだったが70円(!)だった。
店内に「捨てる前に持ってこい」という意味の音声案内が流れており、言おうとすることは引き取ってやるということ。なき子も納得するだろう。こうした流通が、一方向にだけの経済活動として成立する時代を、彼が生きているときは想像できなかった。まだ20年とたってないが、もう時代に追いつくことはできないよと墓で泣き言を言う自分を脳裡に映像化してみる正月もおわりにしよう。
前もって灯油を振り撒き自前の焼却炉で、彼の遺したものを焼きに焼いた後のことだ。いくらか手元にのこした。そうしたことを繰り返して、記憶を遠ざけようというなか。まだ、あるある。
新調した中古車(!)にナビがついていて、テレビながらドライバーとなる。挿入口が二つあって、一つはMDのようだ。彼の遺したそれとおぼしきケースを開けると、それはMDではなくゲーム・ソフトだった。

漫画は合計70円だったが、こうしたCDのようなものも別に段ボール一箱あってこちらは400円くらいもらった。キャスターで運びいれると、「値を付けた順に店頭に出してよいか? 値の付かないものを引き取るか?」と念を押す。その意図はよくわかる。ただで引き取るだけのもので、商売をするのだ。子も笑って許してくれるだろう。彼には小学一年の時から古本屋の愉しさを教えてやったから、今の世の中の僕と同じ感想をもつだろう。

灰にしたもののそこここに懐かしい筆跡の名前を見た。小川窓太。弔電に名をほめる教師のものがあった。私は自分がほめられるようにうつむいたのだった。