伏せるな

また青い空が戻って三日め、杉板の弁当箱は陰干しでよく乾いた。
伏せるな、二つを交互に使え、一日じゃ乾ききらないから……。そう言われてきたが、東北とは吹く風も違う。

乾いた雑巾でぬぐったら、さっそくキズもの。これからゆっくり年期の入る器になりさがるだろう。ちっとも構わない。

白木の飯入れ大に気になる糊のはみ出しがあったが、これからタワシでこそげるのが擦り込むのか分からない日々のかなで、あばたがエクボになっていくのだ。

一つ包んで渡すと明日洗って返す、そう言ったように口が動いたように見えたが、曲げワッパの弁当に一言添えるべきだった。空で返せはもちろんだが、テキトーに擦って洗ってくれたらよいと。

曲げの職人に6000円で二段、漆のそれに一枚4000円見当。島の手織りの帯封に……いくらかかるかまだ。ちょまを育てて繊維を取り出さなくては、紡いで糸にするのもかなわない。

島内にできた知り合いの器趣味の面々には二万円かなと言ってきたが、それでは収まらない。

まずは売り物でなく使うのだから、だからといって有り難くもったいつけて飯を詰める気はないのだ。

お披露目のとき、すでに年期が入った弁当箱……。という段取りを描いている。


ロングインタビューは今日まで、2013年1月22日まで。