野の百合、エレベータの中で

五階から降る僅かの間に考えた。枝百本を求めて藪に分けいると、私に逢いにここまで来た者はお前ひとりだと野の百合。

私の口から出たのは背負いの籠に鉈見れば、只の通りすがりだと分かるだろう?

誰にも知られず咲いているのに、なんてことをお言いかと百合はうつむくのである。

ことばは止めよう。手折られたいか立ち枯れたいか聞けば、答えねばなるまい。ひとまず山小屋まで、彼女を胸に抱いてとって返した。
1Fてドアが開いた。何秒のことだったか帰宅のさい、腕時計をしておこう。