立像二体

暗青色のサバニが港開口部に消えたあと再び離島桟橋に視線をもどすと、突堤の先端と四角い積み荷の向こうに動かぬ立像二体に気がついた。

ときに入水を逡巡する者もおろうが、ほぼ竿持つひとである。二人も暗青サバニの生業の毎日を、知っているだろう。
そう思うと二つの立像にテレパシーを、送ってみたくなった。

ひとりににしゃがめー! もう一人にグルグル腕を回せー! どちらの立像も動く気配はなかった。
浮きが、動かなかっただけのことである。