柿渋のロープ

靴、とりわけトリッペンには柿渋のロープを結んできた。もってこいという言い方がぴったりだから仕方ない。

次に見せる結びのマスコットのような一連のものの中でも、柿渋ロープ遣いは何か特別の印象が触覚からだけでなく伝わる。

それもこれもハンモックを編んだ残りの欠片に由来すると説明してきたが、こうアイテムが増えると余りだけでは事欠く。短く切って、このための柿渋ロープを用意しなくてはならない。

いつも頼んでいる岡田源衛(大垣)さんから、少しまとめて届いた。ロープはいつも染めているものとは勝手が違って、ずいぶん面倒をかけたに違いない。
これでも染めやすい長さに、整えた束を作ってお願いしたつもりだ。

三ミリ・四ミリ・五ミリの柿渋染めの綿ロープのストックは、これで充分だ。これを一〇年かけて使いきって、私の結びの仕事は終わるだろう──。そう思うと八回染めたと岡田さんが言うロープの仮束を、巻き直しておくことにした。総柿渋網のハンモックはもう一〇と作らず、トリッペンの靴に使うだろう。

少し残して終わった時を考えて束を結う紐にタフロープ(引出し成型のスチロール)をやめて、アダンの気根を割いた筋を用いることにした。気根は割くとその尖端が細まり黒ずんで、こうして束ねると好ましい貌(かお)を見せるのだった。


30メートルカセで三ミリは10束、四ミリは8束、五ミリ径は5束。トリッペンは100足を結ぶ構想を立てている。すべて異なる結びによって……、である。

旧宅を仕舞うとき私たち兄弟とともに育ったような柿の木を、三本も四本も切った。最後の年の実は1000個もピューレを試みたが柿渋の必要を、岡田さんその上には考えられなかった。。ピューレよりずっと永い時間を閉じ込められるという風には構想できなかったのだ。