ヨリを戻す話

少しづつ拗(こじ)れていき半月ほどシンギンした挙げ句、ようやく回復に向かう――。これが医者にかからない私の風邪の治し方だったが、もはや年相応でない。
港に面した五階1ルームを開け放って、一日ふさぎ込む。七日六本のDVDも枕元から遠ざけて、島でのこころざしを振り返った。

図録2には「2015年当初より00151から00293までに、032シリーズを32足加えた175足を収めた」と、表書きがしてある。

デコラティブな結びのターニングポイントは、しばしば報告したように318足目だった。図録2に収まったトリッペンは、75ページ00290と巻末128ページの0293のだけだ。

図録2に綴った中には収めなかったが、オーブラ・レンツさんがベルリンのトリッペンに届けて下さった「トリッペン2ダースの結び」アルバム。

トリッペンの靴は手元に一〇足もない、次なる結びを試みるには解かなくてはならない。その作品ナンバーにダッシュをつけて次なる展開となるのだが、ダッシュが五つも六つもついて。

やがて解くに解けない縄筋が、出来上がってしまうのだった。まもなくエルザに会ったころ、百通りも結んだ「結んだ記録だけの結び」が私の中で急に輝きをなくしているのに気がついた。メモはここまで。