忘れられたもの

シナリオという雑誌のシナリオ教室で会ったあきお君はそのまた弟とともに、飄々としていたと達夫君は言ってた。

一冊欠けたが「トーボ君」を、傍に置く作のひとりにしている。線路伝いにやって来てまた同じ経路を帰って行ったトーボは、あきおの別れの遺言であろう。やるだけやった。

垣根ごしに無闇に吠えるものを忘れられた犬だと思い遣るエピソードを、こんな日陰にうち棄てられた鉢を見ると思い出す。

いずれ持ち去る。サンゲツ本社ギャラリーの企画を、年に何本かしていた頃がある。日当たりはよいが壁面を作るために塞いだストックヤードに、枯れたラン鉢がいくつも置き去りになっていた。

ある日搬出のついでにまとめて持ち帰って、地植えして咲かせてやった。虫に派手に喰われたが、それもよいではないか。

と、ここまで二年も経ったあるときサンゲツの担当者に何気なく報告書してみると、そうですかというものだった。