ロープと私

 アウトドアについて書かれた本屋の棚をながめると、ロープワークに関した書籍を豊富に見つけるようになったが、私たちの暮らしに根付いたものは多くない。もしあるとすればそれは別の棚にあるはずだ。
 こんなことをしていると時々ロープワークのマニアに行き会うこともあるが、この国のハンモック事情のように日々の生活からは虚しく浮いたものだ。南の「楽園」にはハンモックを35年編んできた私を、熱く締めくくる違うシチュエーションがないものだろうか。
 多くを望んでいないが、よわい五まわり目の丑を迎えた年男のささやかだが堅い希望だ。

 写真の青木さんは谷にケーブルを渡して、鉄塔から鉄塔を渡り歩いて七○を越えた独り者。亡父の納屋を相続して現在、解体を手伝ってもらっている。身に余る作業だが、土木機材を使わない仕事に心強い。
 縄やロープは繊維がただ単純にねじり合わさったものでなく、各々が逆向きにヨリがかかっているので戻ろうとする力がロープをロープたらしめる作りになっている。そこで一方向に巻いて使うと、ヨリが戻ったり又反対にヨリがさらにかかって、途中で折れたロープ自体がヨリ合わさって倍の太さのロープになりかかったりする。

 そこで扱いなれた者の仕事仕舞いは、このヨリを正常に復帰させながら収める。写真の彼がその様子である。